最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)859号 判決 1967年1月20日
上告人
鳴海堅一
(ほか四名)
右法定代理人親権者母
鳴海タキ
上告人
千葉セツ
上告人
前田春枝
右上告人七名訴訟代理人
寺井俊世
被上告人
織田覚観
右訴訟代理人
葛西千代治
右訴訟復代理人
成田哲雄
主文
原判決文第四項を次のとおり変更する。
被控訴人らは控訴人に対し、右許可を条件として、右土地を明渡せその余の部分に対する上告を棄却する。
訴訟の総費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人寺井俊正の上告理由第一・二点について。
本件農地の売買代金が八二万五千円であり、売買費用合計が一万五千円以上に及ぶものではない旨の原判決の事実認定は、その挙示する証拠関係に照らして是認しえなくはない。論旨は、原審の裁量に属する証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、採用することができない。
同第三点について。
買戻の効果が発生するためには、買戻権者において代金と費用を提供して買戻の意思表示をすれば足り(民法五七九条・五八三条一項参照)、代金と費用とを供託することを要しないものと解すべきであるから、供託が失効したとの主張は、本件の結論に影響のない主張というべく、原判決がこれにつき判示するところがなくても、判断遺脱の違法があるとはいえない。論旨は採用することができない。
同第四点について。
県知事の許可がないかぎり本件農地の買戻は効力を発生しないのであるから、買戻に伴う本件農地の明渡義務も発生しないこと明らかである。されば、被上告人も許可を条件として明渡を訴求しているのに、無条件明渡を命じた原判決第四項は誤りであるといわなければならない。論旨は理由あり、原判決第四項を破棄し、これを主文のとおり変更すべきものとする。
よつて、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、九〇条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)